約 1,076,879 件
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/440.html
「これ、嫌いなんだけどな」 少し残念そうな言葉を漏らす女性は、我らがヴァリエール嬢。 朝食にしては豪華な料理が並んでいるが、今日のメニューは少し物足りないようだ。 ここ、トリスティン魔法学院は食事のマナーにも厳しい、が、貴族の食事は社交も兼ねることが多いため、大声で雑談しなければ特に注意されることもない。 今までは誰とも会話せず食事を進めていたが、最近ではキュルケやタバサ、モンモランシーと会話することも多い。 キュルケを見ると、既に食べ終わっている。 朝から食欲旺盛なキュルケを見て、食べた肉が腹でなく胸に行くのは何故だろうと考え、世の不公平を感じた。 しかし、キュルケと行動を共にすることの多いタバサは、ルイズよりも小柄で、胸もぺったんこ。 胸ではかろうじて勝っているルイズだが、彼女はキュルケと同程度かそれ以上の魔法の使い手だ、どっちにしろ魔法では勝てない。 食事があらかた終われば、デザートが配られる。デザートを配りに来るのは厨房付きのメイドシエスタと他数名の役目。 シエスタは平民だが、ルイズにとっては気の許せる友達でもある。 しかし、胸の大きさは明らかにルイズよりも大きく、これに関しては憎い相手であった。「ヴァリエール、ちゃんと食べないと背どころか胸も小さいままよ?フフン」 キュルケにとっては軽い冗談だったが、その言葉を聞いたルイズとタバサは意を決して苦手な料理に手を出すのだった。 しばらくしてメイド達はデザートを配り始めた。 いつものようにシエスタがルイズの右隣に立ち、ケーキの乗った皿を慣れた手つきでテーブルの上に置く…はずだったが、今回は珍しく別のメイドがデザートを置いた。 いつもいつも同じ列ばかりを担当できないのだろう、と思ったが、あたりを見渡すとシエスタの姿だけが無い。 厨房内の仕事でもしているのだろう、と思いながら、ルイズはデザートに手をのばした。 まもなく食事の終わりを告げる鐘が鳴り、生徒たちは食堂から出て行ったが、ルイズは考え事をしているのか、席に座ったままだった。 「ヴァリエール、何してるのよ。まだ食べ足りないの?」 モンモランシーの言葉に促され、ルイズは腑に落ちないものを感じつつも、席を立ち食堂を出て行った。 そんなルイズを、料理長のマルトーが、何か思い詰めたような表情で見ていた。 午前中の授業が終わり昼食の時間。 朝に続き、昼にもシエスタが顔を見せないの この学院で過ごしている生徒達の大半は、貴族だけあって人の顔をよく覚えている。 しかし、平民のメイドが一人いなくなったからといって、気にすることはない。 『ゼロのルイズ』とあだ名されるほど魔法が苦手な彼女は、そのコンプレックスから負けん気が強く、貴族の権力を傘にして威張り散らすこともあった。 シエスタを助けてから…いや、正確には奇妙な夢を見るようになってからだが、ルイズは『素の自分を見せることが出来る友達』の大切さを自覚し、シエスタをはじめとする平民に目を向けるようになったのだ。 昼食も終わり、午後の授業が始まる。そして午後の授業を終え、夕食の時間が来た。 タバサの指摘を受けて、ようやくルイズは異変に気づく。 食前のお祈りを唱和した時、タバサはルイズの隣で一言「給仕口」と告げたのだ。 ルイズが給仕口を見ると、マルトーと目があった。 それに気づいたのか、マルトーはそそくさと厨房へと隠れてしまった。 その日の夜、明かり一つない食堂のテーブルクロスがもぞもぞと動き、ルイズが顔を出した。 ルイズは鍵を開ける魔法を使えない。爆発を起こさず厨房に忍び込むため、食堂にじっと隠れていたのだ。 給仕口から厨房に行くと、そこには小さなランプが灯されており、その下でマルトーがじっと誰かを待っているようだった。 シエスタなら今のマルトーに、まるで覇気がないと気づいただろう。 「…何か用?」 「 ! …あ、貴族様でしたか。こんな夜更けに、厨房に何か」 「何言ってるのよ。じーっと見られてたら何かあると思うじゃない。今日はシエスタも顔を見せないし。私に用があるんでしょ」 「………」 しばらくの沈黙の後、マルトーは話し始めた。 「昨日学院を視察に来られた、貴族のお方なんですがね…。その貴族様が、シエスタをたいそう気に入ったらしいんでさ。」 ルイズは思わず唾を飲み込んだ。いやな予感がするせいか、少し眠気の混じっていた頭が急速に覚醒していくのが分かった。 「今朝、シエスタは連れて行かれました。『昨日はこの平民が貴族に無礼を働いた』とか言われましてね。頭が真っ白になりましたよ。昨日はさんざん褒めて、今日になったら反逆者扱い。何だってんだ!」 マルトーの拳が、ドン!と、厨房のテーブルを響かせた。 「貴族様ってのは何なんですかい!?シエスタが何をしたって言うんですか!俺は、俺は女衒じゃない!」 マルトーはテーブルの上に置かれた小さな袋を壁に投げつけた。ガシャン、という音ともに散らばったのか、10枚ほどの金貨だった。 「貴族様、ヴァリエール様!何とか出来ねえんですか!シエスタは、連れて行かれた時、ルイズ様には言わないでくれと言ったんでさ。ですがね、泣きながらそんなことを言われたら、黙ってられるわけが無いじゃありませんか!」 ルイズは、怒りと悲しみの混ざったマルトーの声に、不思議な感覚を覚えた。 怒りが一巡して、恐ろしいほど体が冷めていく気がする。 昨日視察に来た貴族は、魔法学院その他の、国の重要機関を監査する立場の貴族だ。 本当の事かどうか分からないが、平民の少女だけを集め、ハーレムを作っているという噂を聞いたことがある。 しかし、思い返してみれば、自分の姉も母も、その貴族を毛嫌いしていた。 おそらく事実なのだろう。 考えてみれば、今日はオールド・オスマンが王宮に呼ばれ、学院にいない。 その隙をねらってシエスタが連れて行かれた。 「…オールド・オスマンがお帰りになられたら、すぐにその話を伝えて」 そう告げると、ルイズは使用人通路の鍵を開けさせて、一目散にシエスタを連れ去った貴族の別荘へと走っていった。 マルトーは、シエスタの言う『おともだち』のルイズを今ひとつ信用しきれていない。 だが、ルイズ以外にこんな話が出来る相手もいなかったのだ。 ルイズは地面を『蹴り』瞬く前に空高く、そして遠くへと跳躍していった。 その姿を見たマルトーは『ゼロ』と呼ばれるメイジでも、空を飛ぶことは出来るのかと、素直に感心していた。 前へ 目次 次へ
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/123.html
ルイズ・フランソワーズ! ブローノ・ブチャラティを呼ぶ② 朝。 ブチャラティの朝は早く始まる。 「昨日は散々だったな・・。結局オレはこのルイズに縛られたままなのか・・・。」 ふと目に止まったのは、左手に刻印された『使い魔のルーン』。 「この文字だ・・。この文字が付いた時からオレの命は再び動きだしたんだ・・・。 いったいこのルーンにはどんなルーツがあるんだ?そして・・。」 ブチャラティはベッドで寝ているルイズを見た。 「メイジとはどう言った存在なんだ?こんな、フーゴやナランチャとそう変わらないくらいの 子にさえこんなマネができるなんて・・やっぱり信じられん。」 ふと、ブチャラティは自分で言ってから少し気分が落ち込んだ。 「・・落ちつけ。ナランチャ達は覚悟を決めて自分で道を選んだんだ。 ここで苛立ったらむしろ死んでいったナランチャ達に対する『侮辱』にすらなる・・。」 そう自分で言い聞かせる。だが感情は振り切れてはくれないっ! 「オレなんかよりナランチャこそルイズに蘇らせてもらえばよかったのに・・・。 あいつ、最後学校に行きたいと言っていた・・。あいつだったらもしかしたらルイズとも打ち解けて・・。」 ――――ブチャラティはそこまで言って、この話題について考えるのをやめた。 「ミスタに撃たせた傷が治っているのは、おそらくジョルノがダメもとで治したからだろう。 気持ちはわからなくもない。(むしろ結果的に助かった。)だがアイツは目の前の成し遂げるべき事をほっぽってまでこんな事をするやつじゃない。 ――――ボスに。ディアボロに勝ったんだな。なぜだか実感できる。ジョルノ達に、『よくやった。』と言ってやらなくっちゃな。そのためにも、帰る方法を探さなくてはな。それにしても・・。」 ブチャラティはルイズのほうに向きなおる。 「う~ん…このクックベリーパイおいし~~…」 未だ目覚めぬご主人様のルイズは海辺に浮かぶクラゲのようにのん気な寝言を浮かべていた。 「ああ…もうたべられないわ~~…ムニャ。」 「人が真剣に考えてる横で…。のん気な貴族もいたもんだな。 ・・・おいルイズ。朝だぞ。起きろよ。」 「ん・・。ふぁ~~あ。もう朝・・?あれ・・?アンタ誰・・・?」 ルイズは結構朝に弱い。ぼぉ~~っとしていて目がとろんっとしていた。 「…自分で召喚した使い魔も忘れてるのかお前は・・。」 「ふぁ・・そっか、昨日から私が呼び出した使い魔がいるんだっけ・・・。」 「さて、ルイズ。オレはこの世界に呼び出されて間もない。この世界についてまだいろいろと わからない事がある。とりあえず・・。」 「ん~~。めんどくさいからその場になったら教えるわ・・。それより着替えお願い。」 「・・・・着替え?」 ブチャラティは言葉の意味がいまいち『理解』できない。 「だから、私の服を着替えさせて頂戴と言っているのよ・・。」 ブチャラティは頭を抱えた。 (貴族というのはこういう奴なのか?まさか『着替え』まで人任せとは 考えても見なかったっ!!) 「手伝わないとは言わせないわっ!やらないとゴハンあげないからね!!」 「・・・・・・了解した・・。」 ブチャラティは渋々着替えを手伝う。 「なあ、男の前で半裸になって恥ずかしいとは全く思わないのか?」 「なんで?あんた使い魔じゃない。」 「いや、確かにそうだが・・・。」 「もうっ!もっとテキパキできないのっ!」 「人の着替えなんてやったことないんだ。我慢しろよ。」 ―そして時は数分流れる― 人間という生き物はまず食べなくては動けないっ!! というわけで朝食を取るため二人は食堂にいた。 「流石貴族・・。朝食からもうこんな物を食べているのか。」 「感謝しなさいよ。あんたは特別な計らいでここで食べれるんだから。」 グゥ~~~。 ブチャラティは自分の腹の音を止める事ができなかった。 「(そういえばヴェネツィアで食べてからまともな食事をしていなかったな・・・。) しかし、いいのか?オレまでこんな朝食を・・・。」 「何言ってんの?あんたはこっち。」 ルイズが指差したのは・・・ブチャラティの目にくるいがなければっ!! いやっ!誰がどう見ても指差した先は床っ! そしてあったのはささやかな黒パンと麦のスープ!! 絶望!そして飢餓!それらは無常にブチャラティを襲う! 「本気か・・・・・?」 「ええ。本気だけど?」 「肉はないのか・・・・?」 「癖になるから、肉は駄目」 そして祈りは唱和される。 ―偉大なる始祖ブリミルの女王陸下よ。今朝もささやかな糧を我に与えたもうたことを感謝いたします― 「ああ。確かに。ささやかだろうさ。」 ブチャラティは皮肉を痛烈に言う。だが届く事はなかった。 そして朝食を取り終え、授業に向かう。その途中にルイズが聞いた話だが、 「なあ、本当に見たんだって。フルーツが皿の中に飲み込まれるように消えていったんだ!」 「おまえが魔法でやったんだろっ!?あのフルーツ僕一個も食べてなかったのにっ!」 なにやら奇妙な言い争いをしていた。だがこの時のルイズは聞き流していたのだった・・。 そして教室。ふと、ブチャラティの耳に笑い声が聞こえてきた。 生徒たちはどうやら自分を見て笑っているらしい。 (おい、ゼロのルイズを見てみろよ。本当に平民を呼び出してるんだぜ?) (流石ゼロのルイズだよな。) (そもそも本当に呼び出したのか?あれ近くにいただけの平民じゃないのか?) ブチャラティは生徒たちを見た。彼らも使い魔をつれている。 フクロウ、ヘビ、カラス、猫、目玉、六本足のトカゲ、蛸人魚etc… 「あいつらの連れてる奴が使い魔ってやつか。」 「あんたもその一匹ってことをお忘れかしらっ?」 やがて先生らしき人物が現れた。 「みなさん始めまして。今年度からみなさんを教えるミセス・シュヴルーズと申します。 さてみなさん。進級おめでとうございます。これから授業も難しくなっていきますが、 みなさんなら大丈夫と期待してますね?」 ふと、何人かがブチャラティの方を見てをクスリと笑った。 否、自分ではなくルイズを見てだ。 そういえばルイズは魔法が苦手だった。空を飛べないところでわかったのだが。 「さて、私の魔法系統は『土』。二つ名は『赤土』のシュヴルーズです。 みなさんにはこの一年間『土』系統の魔法を教えていきます。」 ふとブチャラティは疑問が浮かんだ。 「『土』系統?魔法というのはいくつかの系統に分かれるのか?」 「さてみなさん。魔法の四大系統は?」 その時、見覚えのある顔が見えた。 「『火』『水』『風』『土』の四系統です。そして何という奇遇っ! 僕の属性もミセスと同じく『土』。二つ名は"青銅"のギーシュ・ド・グラモンと申します。 お見知りおきを。」 昨日道を聞いた奴だ。空にも浮かべられたな。ブチャラティは思い出していた。 しかしアイツのあの仕草はどうにかならないものだろうか。そう思わずにはいられないっ! 「よろしく、ミスタ・グラモン。『土』は万物の組成を司る重要な魔法。それをまず覚えてもらうため まず簡単な"錬金"の魔法を覚えてもらいます。」 そう言うとシュヴルーズは石を取り出し、呪文を唱えた。 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・・・・。 石は光りっ!姿を変えるっ! 「そ、それってゴールドですか!?」 どこかの席から赤髪のグラマラスな女が立ち上がり聞く。 浮かべられた時ルイズと一緒にいた奴だ。そうブチャラティは思い出した。 「いいえ。これは真鍮です。金には『スクウェア』クラスからでないと 変えられませんので。」 「なぁ~んだ・・。」 「『スクウェア』クラス?ルイズ、何だそれ魔法にはクラスがあるのか? 「そう。下から、一系統だけの『ドット』二つ重ねる『ライン』 三つの『トライアングル』四つの『スクウェア』があるわ。 ミセス・シュヴルーズのような先生たちはみんな『トライアングル』よ。」 「なるほど。魔法はクラスが4つ、系統が4つだな。 ミスタが聞いたら卒倒するのはだいたいわかった。」 「・・・ミスタ?まあいいわ。あと、系統には一つ失われた系統『虚無』が存在するわ。 もう誰も使うことは出来ないみたいだけど。」 そこまで話して、ブチャラティはまた疑問ができた。 「そういえばルイズ、『おまえ自身』の系統はなんだ?」 「えっ!?・・えっと・・。」 そこまで言ったときだった。 「では、実際に誰かにやってもらいましょうか。ではそこのアナタ。」 そう言って指差されたのは――――ルイズだった。 「ええっ!?『ゼロのルイズ』が!?」 「やめたほうがいいんじゃ・・!」 みんなが騒ぎ出す。どうしたと言うのだろう。ルイズが魔法が苦手なのは知っていたが、 それにしてはこの動揺のしかたは普通じゃあないっ!! 「あの・・先生やめた方がいいんじゃ・・。」 「危険ですっ!!ルイズに任せるなんて、地雷原でタップダンスを躍れというようなもんですよっ!」 さっきの女も立ち上がった。 「ルイズに任せるくらいなら私がやりますよっ!」 「危険・・?"錬金"の何が危険なんですか?」 「やらせてくださいっ!!」 ルイズがブチャラティをどかして教卓の前に立った。 「ルイズ!やめなさいよっ!」 「静かにして。気が散るから。」 ブチャラティは近くにいた青い髪の生徒に聞こうとした。だが、危機を察知したように 誰にも気づかれないように教室から出た。 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・。 「・・・『何か』が・・・おかしいっ!ただルイズが魔法が苦手にしては 状況があまりにもおかしすぎるっ!おいっ!どういうことなんだ!?」 ブチャラティは他の生徒に聞いた。 「おい・・。これから『ゼロのルイズ』の使い魔をやっていくからには一つ 大切な事をおぼえていたほうがいいぜ・・。アイツの魔法は・・!」 「なにやってるんだっ!『呪文』を唱えたぞ!何かにかくれるんだぁーーー!!!」 ピカッ!! ルイズの所から光りが発する!!ブチャラティの危険信号はすでに自分を襲おうとしている危機を悟った!! 「まずい・・・!!」 ―※― 「今年も無事に新学期が始まったのう。ミス・ロングビル。」 「ええ。何よりです。」 学院長室。そこには学院長とその秘書がいた。 「学院長としてこれほどの事はない・・。」 ヒュン! フワワン。 ミス・ロングビルの杖の一振りで水パイプを奪われる学院長。 「うむぅ・・年寄りの楽しみを奪うと言うのかねミス・ロングビル。」 「お尻をさわるのはやめてくださいオールド・オスマン。」 都合が悪くなった学院長はふと思い出す。 「そういえば昨日使い魔の召喚があったようじゃのう。」 「(・・・クソジジイが・・・。)ええ。ただ、ひとりだけ変わった使い魔を呼び出したみたいですが。 たしか・・。」 「うむ・・。例のミス・ヴァリエール家の三女か。使い魔とは永遠の僕であり、友である・・。さてミス・ヴァリエールの使い魔はどうなのじゃろうな・・。しかし人間とは驚いた。」 「チューチュー。」 ふといつの間にか白ねずみがいた。 「おお、我が使い魔モートソグニルよ、お前とも長い付き合いじゃな。 ・・・ほう、白か。純白とな!!」 「・・・!!!オールド・オスマン。今度やったら王室に報告しますよっ!!」 なにをしたのか?下着をのぞいたのであるっ! 「下着を覗かれたくらいでカッカしなさんなっ!そんなだから婚期を逃すのじゃ!」 プッツ~ン ボコッドカッ プッツンしたロングビルは蹴りをかました! 「やめて、降参、もうしないから・・・。」 ドッカーーーン!! 「おや・・。噂をすれば・・・・。」 「ええ、『また』だったみたいですね。未だこんな事ばっかりだそうです。 そういえばミセス・シュヴルーズに教えておくのを忘れていました・・・。」 「うむ・・。ミス・ヴァリエールも『失敗』するだけで『使えない』わけでは ないのだが・・・。彼女も不憫な・・。」 「オールド・オスマン!!」 突然ドアを開けてやってきたのは召喚の儀式の時にいた中年の男っ! 「えっと、君は、たしか・・・えっと。」 「コルベールですよ。オールド・オスマン。」 「そうそう。ノックもせんで何事じゃ騒々しい。」 「緊急にお伝えしたい事がございまして・・・!これを!」 コルベールが出したのは分厚い本!本の虫しか読みそうにない代物だっ! 「なんじゃこれは・・・。『始祖ブリミルの使い魔達』ではないか・・。こんなモン読んでばっかいるから お主の印象も薄れてしまうと言うのが・・・。」 「見ていただきたいのは・・・こちらです。」 『それ』を見た時、この学院長の目つきが変わった。 「ミス・ロングビル。席を外してもらおうかの。」 「はい。」 ガチャン。 ドザザザザザザザザザ・・・・・・。 「詳しく・・・話してもらおうかの。ミスタ・コルベール。」 ―※― 爆発の震源地はルイズのいた教室。いや、もっと言うならルイズのすぐそばだった。 「どういうことかいろいろと説明がほしいのだが・・・・。」 ブチャラティは聞いた。 「ツツ・・。これが『ゼロのルイズ』さっ!」 「もうっ!ルイズ!!だから言ったのにっ!」 「キュルケ・・。急に立ち上がらないでくれ・・。」 キュルケとよばれたあの赤髪の女が怒っていた。 「ちょっと失敗したみたいね・・。」 「どこがちょっとだよっ!いままで成功の確率ゼロじゃないかっ!!」 ギーシュもまた怒っていた。 「なるほど・・。だから『ゼロのルイズ』か・・・。言いえて妙だ・・・。」 (・・・?あれ、こいつ『無傷』っ!?どういうことだ?服の汚れすらないぞっ!?) 一通り授業が終わった後ルイズが言った。 「あんた今日飯抜きね。」 「なんだとっ!?」 八つ当たりだろうかっ!!ルイズは無情に言い放つっ! 「ふざけた事言ってんじゃねーぞこのくそガキがっ!! よびだしたからにはそれ相応の責任と言うやつを・・・!」 「命令よ・・・・!」 怒りを押し殺したような声でそう言った。そしてどっかに行ってしまった。 (この女はふざけているのか?いやマジだった。奴は本気でオレの飯を抜くつもりだっ!) 流石のブチャラティも怒りをあらわにしていた。 「クソッ!せっかく生き返っても、これじゃまたすぐに死んじまうっ!」 そんな時だった。 「あ、あの、すいません。どうかなさいましたか?」 ふと声がした。 後ろにいたのはメイド服の女の子だった。 「・・・いや、なんでもないんだ。すまない。」 ブチャラティはそういって去ろうとした時だった。 「あれ、もしかしてあなたがミス・ヴァリエールの使い魔になった平民の方ですか?」 知られているのか。ブチャラティは振り返って言った。 「そうだ・・。君も魔法使い・・・いや、メイジか?」 「いえ、私も平民です。ここには奉公のために貴族を世話しに来ているんです。 あ、そういえば自己紹介が・・。シエスタと申します。」 「ブローノ・ブチャラティだ・・。ブチャラティでいい。」 グゥウウウウ・・・。 ふとブチャラティの腹の音が鳴った。朝食がもう消化されたのだ。 ブチャラティが拳を作って胸に当てようとした時だった。 「あ、お腹が空いているみたいですね・・。あの、残り物でよろしかったら、食べていきませんか?」 「え・・・?」 「困ってる時はお互い様です。どうぞ、遠慮なさらずに。」 ブチャラティは不覚にも―――感動していた。 こんなに人に優しくされたのは何時ぶりだったろうか・・・。そう思っていた。 彼女の前でなかったなら、涙すら流していたかもしれない。 「グラッツェ。(ありがとう)じゃ、貰っていくよ。」 ブチャラティは微笑みながらそう言った・・。 to be continued……
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/107.html
掟破りの二重契約。 ルイズが行った最終手段とはそれであった。 その名の示すとおり、使い魔との契約を重ね掛けする術。 古今東西、あらゆるメイジの歴史の中で、1度契約を交わした使い魔を御せられなかったという話など、ルイズは聞いたこともなかった。 どんな凶暴な魔獣であれ、契約すればペット同然に扱える。 それほどまでに、サモン・サーヴァントとは強制力を持った儀式なのだ。1度以上の契約など、必要ないのだ。 しかし、ルイズは今回自ら二重契約を行った。 つまり、自分には使い魔を制御する力がありませんと認めるようなものだった。 貴族として、メイジとして、そしてヴァリエールの娘としての恥だ。 だからこそ、これは最終手段だったのだ。 自分の名誉にかかわる。 それに、二重契約には落とし穴があった。 確かに、二重契約を行えば使い魔との繋がりが強力なものとなり、制御もしやすくやる。 だが、繋がりが強くなるということは使い魔と精神的により深く同調することだ。 下手をすれば自分と使い魔の境界を浸食され、心を破壊されてしまう。 ルイズはもちろん初めは使う気などさらさらなかった。 だか、コルベールが倒され、そして自分のライバルであり友人でもあるキュルケがあの触手に捕らわれるのを見たときに、ルイズは密かに決心した。 あの異常な使い魔…再生能力に触手に目からビームにetc…. バラバラ死体から復活したばかりの、弱っているだろう今のうちに、自分の制御下に置いてしまわねばとんでもないことになる……。 はたしてルイズの策は功を湊したが、ルイズがそれを確認することは出来なかった。 二重契約をして、ようやくヤツにはっきり刻み込まれた使い魔のルーンを見た後ルイズは、使い魔を下敷きにしていたとはいえ、地面にもろに叩きつけらて、衝撃で脳を揺さぶられ、貧血も相まって無様に伸びる。 身を預けた己の使い魔の胸は、広くてたくましかった。 黒一色に染まっていく視界の端で、タバサのシルフィードがゆっくりと着地して来るのが見えた。 タバサ―――無傷。 キュルケ―――軽傷(ただし、心に刻み込まれたトラウマは深 い)。 コルベール―――片足をビームで貫かれ重傷。 ルイズ―――全身と左肩に穴をあけられたことによる大量失血 で瀕死の重傷、意識不明。 ルイズの使い魔―――完全契約。気絶。 to be continued…… 14へ
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1638.html
DIOが使い魔!? ◆Wbi9AknFck スターダストファミリアー ◆LSP/td4iE2 スターダストは砕けない ◆LSP/td4iE2 サブ・ゼロの使い魔 ◆oviEMgpce6 Start Ball Run ◆k7GDmgD5wQ ゼロと奇妙な鉄の使い魔 ◆PEFli7wTN2 ゼロと奇妙な隠者 ◆4Yhl5ydrxE 使い魔ファイト ◆Ux26ysntzk ゼロのパーティ ◆5ckVgDaSVk アンリエッタ+康一 ◆3D2JBRgybs ヘビー・ゼロ ◆a97Bny7H1c 愚者(ゼロ)の使い魔 ◆Dv3XctLjy. ゼロのスネイク ◆jW.eGr2I9s 亜空の使い魔 ◆cpD80RhRDE 鮫技男と桃髪女 ◆7/eeytaWnw アヌビス神・妖刀流舞 ◆6Dp6kmr0yc つかいまがとおるっ! ◆1kaqwCsXPI 使い魔は天国への扉を静かに開く ◆1kaqwCsXPI 風と虚無の使い魔 ◆/4V68E5Ojg
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1376.html
朝食も済ませ、つやつやとした顔色のルイズは、キラークイーンを従え教室へと向かっていた。 余談だが、朝食の席でルイズがキラークイーンに食事が必要かどうか試すために与えたパンの欠片は、やはり必要ないと判明。 ついでとばかりに能力実験も行い、爆弾にされ投げ捨てられた。 ・・・それがギーシュの朝食に当たり、彼のそれが吹き飛んだことはまた、別のお話。 ここでは彼の色男っぷりが上がったということだけを記しておこう。 「ああん、ワイルドなギーシュも素敵よぉ~」 「ケホッゴホッ・・・ありがとう、モンモランシー。しかし一体何なんだ?」 ・・・ケッ!色気づきやがって・・・おっと失礼。続きといきましょうか。 そんなこんなで扉の前。 教室へ入ったときのみんなの反応を想像(多分に妄想を含む)しながら、 そのためににやつく顔を必死で抑え・・・ざわめく教室へと踏み込む。 ・・・。 それまで騒がしかったその場が一瞬、静寂に包まれた。 「ゼロが成功・・・。」 「ありえねえ・・・。」 「しかもわりとまともな・・・。」 しかしそれも一瞬のこと、すぐに失礼にも程がある声がいくつも聞こえてきた。 妄想世界の住人となっていたルイズには少々キツイ洗礼である。 しかしさすがにゼロと呼ばれ続けた少女。 このような場合を無意識に想定していたためか、いきなりブチ切れるといった失態は見せない。 しかしくやしいものはくやしいし、ムカつくものはムカつく。 内心は穏やかではなかった。 その怒りは授業の最中にも燻り続け、普段ならばありえない態度となって表れていた。 「ミス・ヴァリエール?ちゃんと授業に集中なさいね。」 「あ・・・すみませんでした・・・。」 「ルイズ~授業くらいはちゃんと聞けよな、ゼロのルイズの唯一のと・り・え・なんだからさぁ~。」 「こ、この・・・風邪ッぴきの分際でッ・・・!」 「僕はッ!風上だッ!二度と間違えるな!」 「あらあら、間違えるなと言うのなら、やっぱり風邪っぴきよ。」 「風上だと言っているッ!!」 「お二人ともいい加減になさい!誇り高き貴族たるもの、そのようなくだらない言い争いは控えるものです。」 「「・・・すいませんでした。」」 「よろしい。では・・・ミス・ヴァリエール。話を聞いていなかった貴方に錬金を命じます。 それで帳消し、ということにしておきますから。さて、何か聞いておくことは?」 「いえ、問題ありません。」 「先生ッ!?それは・・・危険ですっ!!」 「そうです、なんなら代わりに僕がっ!」 キュルケを筆頭に皆が叫ぶ。 「黙りなさい!・・・先生、この私にお任せを。」 優雅に一礼すると、ルイズは教卓に歩み寄った。背後にはキラークイーンが憑いている。 「ときにミス・ヴァリエール・・・先ほどから気になっていたのですが、何故使い魔を?」 「そういう性質なんです。」あらヤダ。この娘、嘘ついた。離れてもムズムズするだけなのに。 カワイソーだけど数秒後には粉微塵になってるのね・・・という視線が幾つもそそがれている石ころ。 だがそれも少しの間だけのこと、ルイズが杖を構えるころには皆、机の下に避難していた。 一部、教室外に逃亡した者もいるようだ。 そして・・・ついにルイズが魔力を込めて呪文を唱えたッ! ドッグォオ~ン!! 石が爆ぜ、机も巻き込んで吹き飛んでゆく! ミセス・シュヴルーズも吹っ飛んだ!さながら壊れた人形のように! ルイズにも破片が襲い掛かる! しかし・・・キラークイーン! この程度の衝撃、破片など恐るるに足りぬ!見事に全てを防ぎきった! 「・・・ちょっと失敗しちゃったみたいね。」 「「「「どこがだっ!」」」」生き残りからの突っ込みが入る。 幸運にしてミセス・シュヴルーズは気絶しただけであり授業は中止。 元凶であるルイズに下った罰は教室の掃除であった。 「細かいのはいけるとして、こういう大きいのは・・・キラークイーン、まとめてやっちゃえ!」 使い魔を駆使して掃除を終えたルイズは、しかし昼食に間に合うことはなかった。 「うぅ・・・お腹空いた・・・。」まるで幽鬼だ。 ふらふらと行くあてもなく彷徨うルイズ。行き着いた中庭で落ち込んでいた。 「あ、あの・・・。」 今にも誰かを道連れに自殺しそうな雰囲気のルイズに、一人のメイドが声をかけた。 何のことはない、メイド仲間に無理矢理行かされたのだ。 ↓経緯 「彼女よね?食べそびれたのって。何かお出しした方が・・・。」 「で、でも恐い・・・。」 「シエスタァ・・・お願い。」 「わっ私ですか!?」 「「「お願い!」」」 「うぅ・・・。」 かくして彼女に白羽の矢が立った。
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/214.html
ACTの使い魔-1 ACTの使い魔-2 ACTの使い魔-3 ACTの使い魔-4 ACTの使い魔-5 ACTの使い魔-6 ACTの使い魔-7
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/773.html
歩き出す使い魔-1 歩き出す使い魔-2 歩き出す使い魔-3 歩き出す使い魔-4 歩き出す使い魔-5 歩き出す使い魔-6
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/95.html
目の前の超異常事態に多少放心気味のルイズであったが男がこちらに近付いてくる事に気付き我を取り戻す。 「これは・・・アンタがやった事なの!?」 だがプロシュートは何も答えずルイズにさらに近付く。 「ちょっと・・・ご主人様が聞いてるんだから答えなさいよ!」 「テメー・・・一体何モンだ?オレに何をした?」 「平民が貴族に向かってそんな口の利き方していいと思ってるの!?」 「2秒以内に答えろ……オレに何をした?」 「質問に答えなさい!」 ルイズが怒鳴り散らすがプロシュートは全く動じない。 「ウーノ!(1)」 「ひ、人の話を聞きな――」 「ドゥーエ!(2)」 ルイズは魔法成功率0とはいえメイジ…つまり貴族だ。 平民という存在より圧倒的に上の立場にいると言ってもいい。 だが組織の暗殺チームの一員とし幾つもの死線を潜り抜けてきたプロシュートから見れば「良いとこのボンボン」つまり「マンモーニ」にしか見えない。 そして、その百戦錬磨の暗殺者としてのプロシュートの「スゴ味」が自然とルイズに質問の答えを答えさせていたッ! 「……アンタを召喚したのよ」 「召喚だと…?」 「そうよ、本当ならアンタみたいな平民なんかじゃなく 皆が召喚したようなドラゴンとかを使い魔にするはずだったんだけど何処を間違ったかアンタが召喚されたってわけ」 「その左手のルーンがアンタが私の使い魔になったって印よ」 「左手…さっきの左手の痛みはそれの事か」 だがプロシュートがある違和感に気付く。 (待て…さっきの左手の痛みはいい、それは納得できる…) (だがオレはその左手を何で押さえたッ!?) プロシュートがその答えを得るべく疑問の先へ視線を向ける。 ┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨ ┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨ 「何ィーーーーーーーーーーッ!!」 「ちょっと…そんなに大声出さなくてもいいじゃない。それに貴族にキス……って何言わせんのよ!」 使い魔の儀式のアレを思い出しルイズが顔を真っ赤にさせるがプロシュートにとっても問題は左手ではなかった。 そう、左手にあるルーンなどどうでもいい。問題は「左手」ではなく「右手」だった。 (バカなッ!?ブチャラティのスティッキィ・フィンガースに切断されたはずの右手がなぜ『付いて』いるッ!?) 「まったく…弟分がお前を引っ張ったその『糸』に救われたぜ」 記憶に映るのはあのフィレンツェ超特急でのブチャラティとの闘い。 「バカなッ!! ブチャラティィイッ!」 (オレの右手はペッシのビーチ・ボーイの糸を殴ったブチャラティの攻撃で確かに『切断』されたはずだッ!) そこまでだ。プロシュートにはそこまでの記憶しかない。いくら記憶を探ってもそれは同じ事だった。 だが地面に激突する瞬間何かの光に包まれたような気がする。 思考を中断し視線をルイズに戻す。 「……テメーの言ってる事はどうやらマジのようだな」 「理解できた?じゃあ早くこの老化を解いてちょうだい」 「断る」 「アンタ…平民、それも使い魔が貴族に逆らえると思ってるの?」 「平民か貴族なんてのはオレたちにとってはどうでもいい、何より使い魔ってのが気に入らねぇ」 「貴族を敵に回してここで生きていけると思ってるの…!?」 「それに使い魔って言っても奴隷とかそういうのじゃなくて主人を守り忠誠を誓うある意味平民にとっては名誉なものよ?」 ルイズが使い魔の事について説明を始める。 が、当のプロシュートは殆ど話を聞いていない。 プロシュートが再び思考を巡らす。だがそれは使い魔になるかならないかという単純なものではなかった。 (どうするか…) 思考の末プロシュートは三つの選択肢を作り出す。 (一つはこいつを殺しここから離脱する事だが…これは駄目だな。 もしこいつの言うとおりここが全く違う世界なら地理が分からねぇしどういうわけか言葉は分かるようだが文字が分からないってのが致命的だ) (二つはこいつを人質にしここから離脱する…これも却下だ。 チビとは言え人一人を無理矢理担いで移動するのは限界があるし何より目立ちすぎる。) (三つは使い魔とやらになったふりをし情報を集める…今の状況下ではこれが最善か…? 殺す事は何時でもできるしやはり何より今は情報が欲しい。それにこいつ…メイジとか言ったがスタンド使いではないようだな。) (スデにグレイトフル・デッドで殴りかかってみたが動揺一つせず汗すらもかきやしねぇ) 自身の状況を正確に把握し最善の策を見出す。それが暗殺者としてプロシュートが生き抜く為に身に付けた事だ。これは当然他のヤツらも持っている。(ペッシ以外だがな) プロシュートのかなり物騒とも言える思考を知らずにルイズが「早くルイズ様の使い魔になるって言いなさい」という視線を送ってくる。 「……大体の状況は理解した」 「そう、それじゃあ早く皆を元に戻してちょうだい!」 「使い魔とやらになってはやる、だが…オレを他の連中と同じと思わねぇ事だなッ!」 ズキュン! グレイトフル・デッドの能力が解除され倒れていた生徒達の老化が解除されしばらくしてコルベールが起き上がる。 「うう……一体何があったのだね?ミス・ヴァリエール。」 「もう大丈夫ですミスタ・コルベール」 「そうか……他の生徒達も大丈夫なようだね、各自教室に戻りなさい。」 生徒達が多少ふらつきながら戻っていく。だがプロシュートは空を見据えたまま動かない。 「ほら、早く戻るわよ!」 (ペッシ…メローネ…ギアッチョ…リゾット…すまねぇな、ボスを倒すと誓ったはずなのにしばらくそっちに戻れそうにねぇ) プロシュートにとって昨日まで一緒に居た仲間が急に遠くに感じられたが、今は状況を少しでも良くする為に前に突き進むしかなかった。 予断だがコルベールのU字ハゲが進行した事は言うまでもない。 戻る< 目次 続く
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/451.html
地面に倒れたまま、中々動かない才人と少女。 このままではマズイ。すぐさま、僕は二人の瞼を開いて意識を確かめる。 白目を剥いていた。 次は呼吸だ。 制服のポケットからティッシュを取り出し、薄く裂いて二人の顔にかぶせる。 二人とも規則正しく、ぴくぴくとティッシュを動かす。呼吸はあるようだ。 どうやら伸びているだけのようだ。 おそらく命に別状がないことを確認した僕は、そのまま二人を森の草むらへと隠した。 これで意識が戻るまでの間ぐらいは、追ってくる相手を巻けるだろう。 一応、追っ手が来れば解るよう、ハイエロファントを辺りにはりめぐらしておく。 そこまでの動作を終えた所で、僕は二人を隠した草むらに、倒れ込むようにして座り込んだ。 これで少しは肩の力も抜けるだろう。 まだ暗くなりきっていない空を見上げると、優に二倍はある大きな月が二つ、僕らを見下ろしていた。 変な動物を見た時も思ったことだが、これで一つ、確信が出来た。ここは僕の知る世界ではないのだ。 改めて確信すると、元の世界の両親の事を思い、寂しい気持ちになった。 だがそれ以上に今の、この奇妙な体験が、頭の殆どを占めていた。 「……。どうしたものかな」 僕は気絶した二人を横目に、今後の方針のため、先ほどまでの事や、喋っていた事を整理する。 整理して解ったことは三つ。 1、ここは自分のいた場所とは、全く別のものであり、昔のヨーロッパのような身分制が引かれていると云うこと。(どの程度、細分化されているかは不明) 1、少なくともこの辺りは、何故か日本語が通じるため、コミニケーションを取るに当たって不自由は無い。 1、ここにはスタンドに似た概念が存在していて、それを使うには杖(どの程度、形状が定まっているかは不明)が必要。 また概念によるクラス分けが存在する模様。 この概念は様々存在しているが、同時に複数使うことは不可能、または困難である。 整理したことで、この世界のルールはある程度解ったが、肝心の、何故僕がここにきたかまでは解らなかった。 とりあえずこの少女には、色々喋ってもらうことがありそうだ。 「あれ? ここは……」 才人は起きあがり、数回頭を振って、辺りの様子を見回す。 いまいち状況が理解できていないようだ。いや、それで普通なのだろう。 こうも淡々と状況を整理している僕が、あまりに非常識すぎるだけだ。 「ようやく、起きたようですね。才人」 「あれ? 花京院…… って事は、夢じゃなかったのかよ」 「ともかく、状況を説明します」 僕は先ほど整理したことを、かいつまんで説明する。今、確実に頼れるコミュニティーはお互いだけなのだ。 才人は、常人なら理解の範疇を越えるであろう僕の憶測を、多少取り乱しはしたが、合間合間に質問を挟みながら聞いていた。 そして全て説明し終えた時、才人は肩を落として、深いため息をつき、弱音をはいた。 「俺達、どうなるんだろうな」 「僕にも解りません。ともかく今は……」 僕は視線を少女の方へと落とす。才人もつられるようにして、少女の方に目線を持っていった。 「この少女に、いろいろ聞く他ないでしょうね」 「はぁ……それし…… がっ!? ぐぅああああああああああああ!」 「才人ッ!?」 突如、才人が左手を押さえて苦しみだした。その押さえた左手は発光しているらしく、押さえている右手の隙間から強い光が漏れる。 まさか、さっきの奴らが使った攻撃か!? 「おい! 起きろ!」 僕は急いで少女をたたき起こした。本来、女性をこうやって邪険に扱うのは許せん事だが、今は緊急事態だ。気にしてはいられない! たたき起こされた少女は不満そうに、目をこすりながらこちらを見た。 「どうすればアレはおさまるッ!」 「はえ……」 まだ完全に起きてはいないらしい。もう一回叩けば起きるかと思ったが、女性を二度叩くのは、いささか気が咎める。 「っ!」 無理にでも起こすか考えている内に、僕の左手の甲に、うっかりストーブを触れてしまったような熱さが、一瞬だけ奔った。 慌てて左腕を見る。先ほどまでと何も変わらない左腕だった。 僕は才人の方に目をやった。左腕の発光は既に収まり、代わりに何かの文様が浮き上がっていた。 「なんなんだよ、これ!」 「………! なんでアンタの方が使い魔になってるのよ!」 才人が自分の手の甲を見て、驚いたように声をあげる。 その声で意識が完全に覚醒したか、少女の方も大声を上げる。こちらは怒鳴っているような声だ。 その声にかちんときたのか、今まで溜まっていた非常識な事に対する怒りが爆発したか、才人も少女を怒鳴りつける。 そのまま二人は、僕のことなど眼中に無いように罵り合いを始めた。 「俺の身体に何しやがった!」 「使い魔のルーンが刻まれただけよ! というか何でアンタなのよ! 私はあっちの『メイジ』と契約を交わすハズだったのに!」 「メイジって何だよ! 意味わかんねえよ!」 「平民が、貴族にそんな口聞いていいと思ってるの?」 「知ったことか! 今すぐ戻せ!」 「その辺でもう……」 このまま何時までも、二人に口げんかをさせていては本当に日が暮れる。 こんな軽装で野宿はごめん被りたい。 僕はこの不毛な争いを止めようと間に入る。 「できるんなら、とっくにしてるわよ! なんでアンタみたいなのを『召喚』しちゃったの!」 「何だって!? 『召喚』!?」 「な、何! 急に大きい声出さないでよ!」 少女の一言に、僕は思わず反応した。 彼女が僕らを呼び出した奴だというのか? しかも「アンタみたいなの」と言った。 つまり、特定の相手を呼び出そうとして呼びだしたわけではないらしい。つまり、僕や才人がここに来たのは『事故』と云うことだ。 つまり僕は独り相撲を取っていたというわけだ。相撲は好きだが、独り相撲は相撲じゃない。などとずれたことを考えた。 しかしこれはマズイ。元の場所に帰れる方法を知っているかもしれない相手の心情を、勝手に暴れて悪くしてしまったことになる。 そうでなくても、少なくとも帰る手段を探すまでは、こちらで生活する必要があるのだ。 ここは何とかして、少女に協力を取り付けるしかない。 少女は僕たちが先ほど逃げてきた施設(トリステイン魔法学校というらしい)へ戻ろうとする。 僕はともかく、この少女……ルイズについていきながら、今の僕らの状況を、憶測もふまえて説明した。 「……という訳です」 「それ、本当?」 「嘘ついてどうするよ」 「信じられないわ。異世界があるなんて」 「違う星、という可能性もありますが」 説明している間に暗くなった空を見上げ、僕の知っている月の、優に二倍はある二つの月を眺めながら、言う。 「どっちにしたって同じよ。いったいそんなものが何処にあるのよ」 「俺の元いた所にはあったんだよ! そこには月が一つで、魔法使いもいな……い……よな?」 才人が途中で言葉をうち切り、僕の方に話を振る。 僕のスタンドも、彼からしてみれば魔法と同じくファンタジーの産物だろう。 そういえば一度も説明していなかった。話すだけは話しておく必要があるだろう。 僕は簡単に精神の力を、様々なものを通じて実体化させる力とだけ説明をした。 しかし、なまじ似た概念が存在すると、返って理解を妨げるとは思わなかった。 「だから『魔法』と何が違うわけ?」 何度説明しても、さっきからずっとこの調子だ。わからんやつだなッ! とどこか叩きたい気分になった。 まだ才人のように、超能力ですましてくれる方が楽だ。 理解してくれるまで、同じ説明を何度も繰り返している内、僕らはようやくトリステイン魔法学院にたどり着いた。 つくなりルイズは、 「あんた達はここで待ってなさい」 といって僕らを門の前で待たせ、先に学院の中へ入っていった。 まぁ、あれだけ暴れた相手がまた学院に姿を見せれば、騒ぎになることは間違いない。 待っている間に、僕は門に身体を預け、これから先のことに思いをはせた。 「なぁ、俺たちどうなるんだろうな」 「……」 「家に……帰りたいなぁ……」 「……ああ」 しんみりとする。僕もふと、両親の事を思い出していた。 父さんと母さんはどうしているだろう。もう寝むっているのだろうか? 晩ご飯も無駄になったんだろうな。心配かけてすみません。 「あ! 」 「どうしたッ!」 突如、才人が挙げた声に驚き、僕は思考を中断して反応した。 「パソコン入ったカバン、落とした」 「才人……」 「ん? 」 僕はとりあえず、才人の顔面に、後で肘を決めておく事にした。
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/51.html
どうやら貴族というものは自分で服を着るという概念はないようだ。 ルイズを着替えさせながらそう思う。目が覚めるとまず私に驚く。私が召還された使い魔だと思い出すと突然、 「服」 と言い出す。まったく貴族という奴は皆こうなのか? ルイズとともに部屋を出る。すると別の部屋からも誰か出てくる。 赤い髪で褐色の肌を持つ女だった。ルイズより背が高く顔の彫りは深い。バストは大きくブラウスのボタンを外し強調されている。 彼女はこちら見ると薄く笑う。 「おはよう。ルイズ」 「おはよう。キュルケ」 ルイズは嫌そうに挨拶を返す。彼女の名前はキュルケというらしい。 「あなたの使い魔って、それ?」 キュルケはこちらを指差すと馬鹿にした風に言う。 「そうよ」 ルイズが意地になって言う。 「あっはっは!ほんとに人間なのね!すごいじゃない!」 やれやれ、貴族というのはこんなのばかりなのか。 まぁ、生活の苦労を知らなければこうなるのは当たり前かもしれないな。 生まれたときから人の上に立ち、甘やかされて育ったのだろう。 ルイズとキュルケが話しているとキュルケが出てきた部屋から赤く大きなトカゲのような生物が現れた。 そこにいるだけで周辺の温度が上がる。 何だこれは? それが顔に出たのだろう。キュルケが笑いながら説明する。どうやらこの生物は火トカゲというらしい。これが彼女の使い魔でフレイムというらしい。 火竜山脈とかいう場所の火トカゲでそこの火トカゲはブランドものらしい。きっと見た目と強さに定評があるのだろう。 「それであなた、お名前は?」 キュルケが聞いてくる。 「吉良吉影だ」 「キラヨシカゲ?変な名前」 そりゃこっちの人間からしたら変だろうな。 しかし目の前で言わなくてもいいものを…… 「じゃあ、お先に失礼」 そう言うとキュルケとフレイムは去っていった。ルイズは悔しいのだろう、文句を言っている。 そういやさっき彼女はルイズを『ゼロのルイズ』と言っていたな。召還されたときも誰かがそう言っていた気がする。 ルイズは私を召還したときに随分と馬鹿にされていたようだ。さっきもそうだ。そこには『ゼロのルイズ』という単語が出てくる。ルイズの あだ名なのだろう。 そういえばルイズは魔法を使ってないな。それが関係しているのだろうな。 ルイズが落ち着いたところで食堂に行く。食堂には大きく長いテーブルが三つ並んでおりテーブルには豪華な飾り付けがしてある。 いかにも「私たちは金持ちだ」見たいな感じで呆れるな。料理も朝から豪勢だ。こいつら胸焼けしないのか? 「椅子を引いてちょうだい」 ルイズが言う。椅子を引いてやる。 するとルイズが何か渡してくる。スープだ。そして皿の端にパンを二切れ置く。 「あんたの朝ごはんよ。私の特別な計らいで床で食べていいわ」 そういえば人間は食事を取らないといけないんだったな。理不尽だが我慢する。 少しの辛抱だ。こんなな小娘の言うことを利くのは情報を得るためだ。自分に言い聞かせる。 なにやら祈りが唱和される。こいつらにとってこれがささやかな糧か。早死にするぞ。 5へ